ごあいさつ
はじめまして、Beija-flor ベイジャフロールパン教室 講師の鈴木里美(すずきさとみ)です。
『ホームベーカリー』を120%活用し、作れるパンのバリエーション増やすお手伝いをしています。
ここではあいさつも兼ねて、私がパン作りに出会い変わったことや、講師としての想いをお伝えしたいと思います。
まずは私の過去のお話から。
最後までお付き合いいただけたら幸いです。
見てもらえない
今では前向きと思われることが多い私。
ですが、長いこと自分のことを「できない人間」と思い続けていました。
昔から、ちょっとした失敗でも直ぐに周りと比べ、悲観的になることがよくあったんです。
小学校5年生にあがる前、父の仕事で名古屋から東京へ引っ越しました。
習い事でやっていた新体操を続けるため、東京にあるクラブチームに入団。
そこは、オリンピック選手を出すほどの強いチームでした。
入って早々、「レベルが違う」そう感じたのを覚えています。
今まで習っていたクラブチームとは違い、技術がある子はしっかり指導してもらえるけど
そうじゃないと相手にしてもらえない。
そんな厳しい世界でした。
柔軟性がなかった私は、残念ながら相手にしてもらえず。
一人ずつ演技を見せる時も、私の番になると先生はあまり熱心に指導してくれませんでした。
見てもらえない
必要とされていない
子どもながらに感じた辛い気持ち。
それがいつの間にか「私はできない人間」というレッテルをはり、大人になっても苦しむことになりました。
あの時の嫌な感情が今でもずっと記憶に残っているんです。
ブラックな中のオアシス
20代前半、仕事が忙しく毎日12時間労働。
精神的にも身体的にもきつい時期でした。
出勤途中で気分が悪くなって電車を降りたり、泣きながら帰ることも。
「このままでいいのかな」
何度もそう思ったけど、3年は頑張って働こう、そう心に決めて必死に働きました。
そんな中、細々と趣味でやっていたパン作りを習いたいと思い、
近所のパン教室に通い始めました。
そのパン教室は、とにかく当時の私を癒してくれました。
生地を触る感覚、焼き立てのパンの匂い、非日常的な空間。
パン教室にいる時は嫌なことを全て忘れ、レッスンに没頭しました。
当時勤めていた会社の上司には、「パンでストレス発散してるんちゃうの~?」と笑いながら言われましたが、本当にその通り。毎月のレッスンを楽しみに日々頑張れたのです。
あきらめ
パン教室に通い始めた最初の頃は、何度か家でも挑戦しました。
ところが、一人で焼くと失敗の繰り返し。
思った以上に膨らまなかったり、てっぺんだけ焦げて周りは白かったり。。
「習っているのにうまくできない」
ここでもまた、できない自分が顔を出したのです。
どこまでこねればいいんだろう
発酵の時間はどのくらいがいいんだろう
正解が分からず、半信半疑で進めていく工程。
レシピ通りに作ればいい。
そう思っていたけれど、成功したりしなかったり。
パン作りの基本が身についていなかった当時の私は、もう一つの趣味だったお菓子作りより難しく感じてしまったんです。
無意識に引きづっている当時の記憶のせいなのか。。。
「私には無理」と、その時は家でのパン作りをあきらめました。
心の葛藤
その後、結婚して子どもを授かり、生活の中心は子育てと仕事になっていきました。
理想の母親像として無意識に目標としていたのが、自分の母の姿です。
私が小さいころにIT業界で働いていた母。
夜、私と弟を寝かせて仕事へ行くこともよくあったそう。
でも、どんなに忙しくても、必ずメモと一緒にご飯が用意してありました。
時間があれば掃除や洗濯など家のことをして、なんでもこなす母。
だから私も、母のようにできる人になりたくて
母業、家事、仕事の完璧を目指した日々。
子供に栄養があるものを食べさせないといけない
毎日部屋をきれいにしておかないといけない
仕事を優先しないといけない
「できない自分」から抜け出すために、〇〇しなきゃいけないと勝手に決めつけ、常識の枠にはまろうと毎日必死。
そしてうまくいかないことがある度に「自分はこんなこともできない」と自己批判して、どんどん悲観的になっていく自分がいました。
ある日、息子を保育園に迎えに行くと、機嫌が悪くてなかなか靴を履いてくれません。
当時はそんなことがしょっちゅうありました。
本当は息子の気持ちをちゃんと聞いて、共感してあげなければいけなかったのに、仕事の疲れからそんな余裕もなく、「早くして!」ときつく怒ってしまうこともしばしば。
この日は特にひどく、イヤイヤが続きなかなか靴を履こうとしませんでした。
もうどうしていいかわからない。
我慢していた思いが爆発し、保育園の玄関で涙が止まらなくなりました。
今思うと、息子のイヤイヤなんてそんなにたいしたことではないのに、当時の私はいっぱいいっぱい。
計画通りに物ごとが進まないと勝手に焦り、自分を追いつめていく。
あの時の不安そうに私を見つめる息子の顔。
「あぁ、また息子に悲しい思いをさせてしまった。。」
その時は後悔するけれど、また同じことを繰り返し、どんどん負のスパイラルに陥っていったのです。
そんな日々の中で、やりたいと思っていたパン作りは、すっかり見えなくなっていました。
転機が訪れる
2019年、全世界を襲った新型コロナウィルス感染症。
世間にとっては悪しき感染症でしたが、あろうことか、私にとっては今に繋がる大きな転機となります。
仕事は大打撃で、勤務時間が大幅に削減。
すると時間に追われる毎日から、少し余裕のある生活になりました。
「そうだ、パンを焼こう!」
思い続けていたやりたいことに、向き合うチャンスができたのです!
この時のパン作りは以前と違い、時間ができたこともあり失敗と向き合うように。
最初に手に取った理論の本は目から鱗が落ちる内容ばかりで、「知らないことがあり過ぎる!」と、パン作りの奥深さを実感しました。
そこから、本を読んでは実践の繰り返し。
パン作りの理論
生地の状態
家庭で作るコツ
これらを理解し、レシピ通りではなく生地と向き合いながら作ることで、どんどん成功する回数が増えていったのです。
すると不思議なことに、、、
パン作りに夢中になるうちに、ずっと引きずっていた見てもらえない苦しみ、私はできない人間という思考がいつの間にか消えていったのです。
なぜパン作りが私を救ってくれたのか。
それは
「パン生地をよく見る」という作り方が私の過去と重なっていたんだと思います。
今までずっと「見られていない過去の自分」にとらわれ過ぎて、自分のことがちゃんと見えていなかった。
勝手に優先順位を決め、こうでなきゃいけないという目標を設定し、心の底にある正直な想いがかき消されていたんです。
でも、パン作りを再開してから、しっかりと自分と向き合い本当に感じていることを理解することで、気持ちがすーっと楽になりました。
さらにパン生地をよく見るという作り方は、小さな成功体験を積み重ねることができる。
そして、できた自分を感じることで少しずつプラス思考になっていったのです。
子育ても仕事も、「あの人すごいな。私にはできない。」と周りと比べて落ち込んでいた私。
ですが、今では「レシピが作れた。」「動画作りが早くなった。」と自分を軸に、できたことに目を向けられるようになりました。
明らかに昔の自分とは変わっていたのです。
見てあげることの大切さ
「こんなに楽しいパン作り、みんなに伝えたい!」
もともとは、こねるのが楽だからという単純な理由でホームベーカリーを導入することに決めました。ですが、生徒さまへホームベーカリーのレッスンを伝えていくうちに、楽なこと以外のメリットもたくさん発見できたのです。
子育てや仕事で忙しい中でも、ながら作業ができる
機械がしっかりとこねてくれることでふわふわなパンが焼ける
成形が自由自在にでき、パンのレパートリーが増える
ホームベーカリーの良さを改めて実感しました。
ホームベーカリーは、ほったらかしなイメージがありますが、私のパン作りは違います。
しっかりと見てあげることで膨らむ生地に仕上げることができます。
人間もパン生地も、見てもらわないといい結果には繫がらない。
生地の状態を確認し、生地と向き合うからこそおいしいパンが焼きあがるんです。
「もう自動で焼くのはやめました」と仰る生徒さんが続出しました。
パン作りの本当の魅力
誰かのために作るのもいい。でも私が一番伝えたいのは、パン作りで自分自身が変われる可能性が大いにあるということ。
好きなことに没頭することでこの上ない充実感を味わえ、生地と向き合うことで「できた」という小さな成功をたくさん体験し、「自分でもできる」という自信へと繋がってゆく。
思考を変え、人生を変える
それがパン作り。
今まで失敗ばかりに目がいき、そんな自分が嫌で嫌でしかたなかった。
でも今は、人生で初めて自分を肯定でき、自分のことが好きと思えるようになりました。
もし今あなたの心の中に、自分を認められない自分が少なからずいるのなら、ぜひ一緒にパン作りをしましょう。私のレッスンをきっかけに、自分が好きと感じる女性たちが増えたら幸いです。